反戦川柳作家・鶴彬

 手と足をもいだ丸太にしてかへし

 暴風と海との恋を見ましたか

 墨をする如き世紀の闇を見よ

 暁をいだいて闇にゐる蕾

 地下へもぐって春へ春への導火線

 母国掠め盗った国の歴史を復習する大声

 枯れ芝よ! 団結をして春を待つ

 

雪崩うつ戦争の時代に、命がけで反戦を貫いた川柳人たちがいた。治安維持法違反で、29歳の生涯を閉じるまで川柳革新の志を曲げなかった。たぐいまれなる才能と、強靱な精神力で川柳を文学に高めた偉業をたどる。

 

【著者】深井一郎(ふかい いちろう)1925年(大正14)富山県高岡市生まれ。1943年9月第四高等学校文科2類卒業、1946年9月京都帝国大学文学部文学科国語国文学専攻卒業、1950年9月金沢大学教育学部に就職、1990年3月金沢大学定年退職、名誉教授に。
 主な著書に『雑兵物語』研究と総索引(1973年 武蔵野書院)、俳諧符合『便船集』飜刻と索引(1977年 金沢近世語研究会)、慶長十年古語字本『沙石集』総索引(1980年 勉誠社)、『近世の語彙』(1981年 明治書院)

 

*定価1365円 四六判 266ページ

*ISBN9784889008104

 

【目次紹介】

 

 1 プロローグ
  1 詩作品
  2 川柳作品
  3 評論作品
  4 鶴と啄木、鶴と小林多喜二、蔵原惟人と鶴彬
  5 鶴彬の川柳遍歴
 
 2 生い立ちと「新興川柳」
  1 生い立ち
  2 川柳入門
  3 田中五呂八に師事
  4 大阪での苦悩

 

 3 「プロレタリア川柳」へ
  1 「生命主義」を乗り超える
  2 郷里での動き
  3 鶴彬の出発
 
 4 第七聯隊赤化事件
  1 治安維持法違反軍法会議、傍聴禁止
  2 喜多一二への判決
  3 角田通信氏の談
  4 『川柳人』の周辺
  5 川柳王道論と井上剣花坊
  6 当時の世相と川柳界

 

 5 大衆性と芸術性
  1 三行書き
  2 富士山と煙突と美と
  3 「定型律形式及び図式主義への闘争」
  4 『りうじん街』への投稿
  5 『蒼空』創刊
  6 大衆性と詩・文壇への接近
  7 諷刺短詩
  8 自由律
  9 連作
  10 鶴・半文銭論争
  11 鶴彬の評論
  12 九州柳壇へ
  
 6 検挙・病・終焉
  1 作品と逮捕
  2 その前後の句
  3 社会主義レアリズムの提唱
  4 最後の川柳評論

 

 7 エピローグ
  1 『川柳人』弾圧事件で
  2 エピローグ
  3 〝語り部〟たちの言葉

 

  年譜

 

  あとがき

 

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