著者/野村 拓(のむら たく)
定価/本体:1000円
判型/A5判
頁数/130ページ
発行/2014年3月20日(奥付記載)
ISBN:9784889009019
【内容紹介】
医療とは「住民共同の生活手段」であり、それゆえに「住民共同の努力」によって充実させていかなければならない、というのがこの本の基本的主張です。「資格証明書発行」とか、「滞納者への差押」というような事態の発生は、いったいどこからおかしくなったのでしょうか。この際、先人の運動をトレースしながら、はっきりさせておかなければなりません。新自由主義政策のもとで、大企業は「人間の使い捨て」を行い、職を失った人たちは国保に加入します。そして税(国保料)の取り立てだけは厳しく迫る「公」の姿。このような「公」と大企業の姿勢、そして住民共同の努力の歴史をとらえれば、助走の方向が浮かび上がってくるでしょう。
【著者紹介】
野村 拓(のむら たく)
・1927年生まれで、今年(2014)米寿を迎える。
・大阪大学医学部助教授、国民医療研究所所長、日本医療経済学会会長などを歴任、本年3月まで北九州医療・福祉総合研究所所長。現在は「医療政策学校」を主宰して、若手研究者の養成に全力投球。
・著書は『講座 医療政策史、1968、2009復刻』、『医学と人権』(1969)、『健康の経済学』(1973)、『日本医師会』(1976)、『昭和医療史』(1991)、『20世紀の医療史』(2002)、『医療の政治力学』(2011)など多数。
【目次紹介】
はじめに
1.なぜ国保の歴史か 闘いへの助走路として
立ち位置をはっきりさせるために/聞きしにまさる保険料/たたかいへの助走路として学ぶこと/無職者が多数派を占める保険に/大企業の後始末を国保が担う現実
コラム①アメリカ企業の医療費負担
2.住民共同の努力 講、組合、診療所づくり
医療は「社会的共同生活手段」/日本最初の県営医療施設
コラム②「銭単位」と「円単位」
3.関東大震災と住民要求 訪問看護、セツルメント
内務大臣後藤新平の「初動」対策/数万の要求ハガキが市長に寄せられた/関東大震災をきっかけにセツルメントや訪問看護が始まる/全国的に甲種合格率が低下/らい病患者は絶
滅させる国策が
コラム③健保はスタートしたけれど
コラム④なぜか「マル秘」の保健行政
4.「共同の努力」の官僚的取り込み 旧国民健康保険法
戦争のための旧国民健康保険法/「医療とは国がお金を出すべきもの」と認識/戦後の国民健康保険壊しに
5.戦後改革と3つのキーワード 社会福祉、社会保障、公衆衛生
社会福祉という言葉が使われなかった戦前/怪しくなった3つのキーワード
コラム⑤「社会事業」は「厚生事業」に
コラム⑥医療民主化の運動
コラム⑦堂々たる労働者の雑誌
コラム⑧横並びのどん底生活
コラム⑨「占領される」とは
コラム⑩公費医療の前進
〈特論1〉岩手の国保
岩手の保健活動への半生/小説もあり/漁民の生活記録/山路を辿る人々/山間僻地の女性教師/吾が村の国保、10割給付制と医療/庶民の声、農村医療の諸問題/保健婦の手記、
わが村の国保/国保直営診療所所長の意見/山村の子たち、町村合併と国保/『岩手の保健』読者アンケート、わが村(町)の国保/医学生の代弁、国保直営診療所医師の問題/青年会
会長の活動/いろいろありました!/医学生たちの保健活動の記録/村の保健婦は
6.医療運動と国保
差別観を跳ね返した戦後の保険医運動/厚生省は「公費」から「保険」へ/疾病と貧困の悪循環
コラム⑪『昭和医療史』(1991)から
7.「健康の切り売り」と国保
財界も国保財政に責任負うべき
8.大企業と国保 人間の使い捨て、そして「人の弱み」で金儲け
企業戦士が退職後、国保に大量加入/社会保障を圧殺するものとは/「短期」と「長期」の重層的運動を
コラム⑫介護保険とシルバー産業
9.先人の運動をトレースしよう 「語り部」の育成も
努力や闘いの軌跡をたどる/国保の10割給付も可能になる
10.国保に対する国と大企業の責任 運動の方向性に自信を持とう
「財界」の介入で「公的」も「保障」もなくなった「介護保険」/「天引き」は戦費調達システムから
〈特論2〉国保と大阪社保協
子どもを守るたたかい
大阪社保協はなぜ門真国保実態調査に取り組んだのか
ふたたび扉を開くために―2003年摂津市国保現地調査とその後
「新・国保読本」発行によせて
〈資料編〉
医療制度の流れ つながりのある歴史を知る 鎌谷勇宏(姫路福祉保育専門学校専任教員)