国民健康保険制度の改善を求める住民運動が各地で前進し、国保料(税)の引き下げ、減免制度の拡充、保険証取り上げの是正など、貴重な成果が勝ちとられるなか、住民にも自治体当局にも説得力のある政策をしめしていく住民運動の質的発展が求められています。そのためにはまずそれぞれの国保会計や自治体財政をしっかり分析することが必要です。住民運動が真の国保再建策を提起するためにこのハンドブックを活用ください。
【著者】 寺内順子 1960年兵庫県生まれ。佛教大学社会学部社会福祉学科を卒業後、障害者施設、共同作業所勤務の後、出産・育児のため退職。1981年大阪社会保障推進協議会(大阪社保協)に入局、現在事務局長。国民健康保険については2008年無保険の子ども問題、門真国保実態調査などに取り組む。著者は『国保広域化でいのちは守れない』(2010年、かもがわ出版)。大阪社保協としての出版物多数。
*定価1500円 A5判 168ページ
*ISBN9784889008760
【目次紹介】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
序 章 今なぜ「国保会計の本」なのか
■3・11の教訓と国保問題
■国保会計の分析が住民運動の焦点に
■本書の構成と目的
第1章 国保財政の基本的な仕組みと収支の費目
■国保の任務-他の医療保険に入らない人への医療保障
■「一般被保険者」への給付費は「公費50%・保険料50%」
■「前期高齢者」への給付費は医療保険間で調整
■「退職者」の給付費は被用者保険が負担
■「後期高齢者」に支援金を拠出
■高額療養費〝国保同士の助けあい〟で負担
■国保会計の収支項目を見てみよう
■国保の収支から見えてくること
第2章 国保財政はなぜこんなに複雑になったのか―国保制度の歴史と財政難の根本原因
■かつて国保会計は単純だった
■〝助けあいの制度〟として旧国保創設
■社会保障の制度として新国保スタート
■国庫支出増と住民負担の軽減
■1980年代の制度改変-国庫負担削減と〝肩代わり〟制度の導入
■「医療構造改革」路線と2006年「医療改革法」
■地方自治制度の改変と国保運営
■国保財政難の真の原因と「国保危機」
第3章 国保財政の現状と住民運動の課題―〝取り立て機関〟への変質か、本当の国保再建か
■民主党政権の国保政策
■国の制度改変・攻撃が自治体当局に与えている
■「保険料引き下げ、国保負担増額」の広範な共同の可能性
■自治体の〝暴走〟チェックと国保会計の分析
第4章 実践編①~わが町の国保会計を分析するために
1.市町村国保会計は千差万別
■相手を説得するためにはインパクトのあるデータが必要
2.国民健康保険特別会計決算書を集めてみよう
■財政の流れ
■自治体の会計には一般会計(普通会計)と特別会計がある
■国民健康保険特別会計決算(国保会計)はどうすれば入手できるのか
3.国保会計分析をするために~決算書をもとにエクセル入力をしてみよう
■決算書だけを眺めていても何もわからない
第5章 実践編②~市町村国保会計を分析してみる
■分析のポイント~金額そのものではなく、比率で比較検討することが重要
1.横浜市国保会計~安定した会計だったが2008年度以降赤字基調に
■1961年度からの横浜国保会計
■横浜市国保会計分析のポイント
■全体の評価
2.大阪市国保会計~国保スタート当初から赤字基調
■大阪市国保会計分析のポイント
■全体の評価
3.神戸市国保会計~横浜市、大阪市と違い累積赤字・単年度赤字もゼロ会計
■神戸市国保会計分析のポイント
■全体の評価
4.和歌山県橋本市国保会計~毎年度黒字の上に膨大な基金を保有
■橋本市国保会計分析のポイント
■全体の評価
5.国保会計分析を国保改善運動での政策づくりのヒントに
■合わせて被保険者(加入者)の所得と保険料の妥当性の分析を
終 章 国保の本当の「危機」を打開するために
■国保の「財政危機」の真相
■真の国保危機打開と社会保障の再生
【資料】2009年度全国市町村国保会計収支決算