国民の圧倒的多数が、できることなら原発依存社会から抜け出したいと考えるようになりましたが、では現実問題として私たちがどのように原発ゼロ社会に向けて転換していくのかについてはまだまだこれからの課題です。
この本では、福島原発事故発生の遙か以前から警鐘を発しながら自然エネルギーへの転換を市民の目線から訴え続けてきた藤永延代さんが、これから長い間にわたって放射線で汚染され続けるこの国の今を鋭く見つめ、新しい社会への具体的な見通しを暮らしの視点で平易に語りかけます。
また西谷文和さんは、命と平和の尊厳を訴え戦争を告発し続けてきたジャーナリストの視点で、原発事故発生から8カ月経過した現在の被災者たちを取材、政府と東京電力の棄民政策的対応に迫ります。
【著者紹介】
▲藤永延代(ふじながのぶよ)
1981年、大阪しろきた市民生協常勤理事。1988年、同生協専務理事。1991年の退任後、市民運動「おおさか市民ネットワーク」を結成し、行政情報公開請求運動を中心に住民自治の活動を開始。以後、食品の安全、廃棄物問題の調査・研究、またデンマークを拠点にスウェーデン・ドイツ・スイス・フインランド・韓国など主に北ヨーロッパに滞在しながら自然エネルギーと廃棄物問題、地方自治などの研修・研究に取り組む。2009年、
韓国とのアスベスト被害共同調査、COP15会議にも参加。2011年、アフリカセネガルで開催の「世界社会フォーラム2011」に参加。
現在、NGO:おおさか市民ネットワーク代表、社団法人大阪自治体問題研究所副理事長、NGO:大阪から公害をなくす会副会長、市民共同発電所全国フォーラム事務局長、自然エネルギー市民の会常任委員ほか多数の市民団体役員を務める。
著作に「いのちにやさしい街づくり」(1991・日本機関紙出版)、「大震災100の教訓」(2002年・かもがわ出版・共著)、「食環境問題QandA」(2004年・ミネルヴァ書房・共著)、「環境展望3」(2004年・実教出版・共著)、「市民の環境安全白書」共著(2006・自治体研究社)ほか。
▲西谷文和(いしたにふみかず)
1960年生まれ、51歳。大阪市立大学を卒業し、1985年から吹田市役所に勤務。2004年末に退職し、現在はフリーランスジャーナリストで「イラクの子どもを救う会」代表。90年代はボスニアやコソボを訪問していたが、9・11事件後に始まった「テロとの戦い」以降、イラクとアフガンを精力的に取材。大量に使用された劣化ウラン弾の影響と思われる被害の実体を見て、内部被曝の恐ろしさを痛感。被爆国である日本から人道支援を行う必要があると感じたため、2003年12月、イラクの子どもを救う会を設立。「中東革命」の勃発に伴い、リビアやエジプト、バーレーンにも入国。2006年度「平和協同ジャーナリスト基金賞」を受賞。
・著作にDVD「戦争あかん」シリーズ、「報道されなかったイラク戦争」「オバマの戦争」(せせらぎ出版)などがある。現在「毎日新聞」月曜日の夕刊で「西谷流地球の歩き方」を連載中。
*定価1300円 A5判142ページ
*ISBN9784889008753
【目次紹介】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まえがき
第1章 原発はもういらない
原発とはチェルノブイリ苛以来の長い付き合い/「藤永君、デンマークに行ってきなさい/道の両側に風力発電が連なる姿に感激/「こうなったらアカン」ち言っていたことが起きてしまった/原爆製造会社の技術者が告発/許せない現場労働者の問題/3号炉はプルサーマル運転中だった/高濃度汚染の中で収束作業/被災者手帳を必ず取得して/膨大な温排水で環境破壊/原発は人間の制御の手を超えたもの/どれだけの情報が隠されているか/たった100日で年間被曝許容量の7倍/アインシュタイン博士は号泣した/核兵器同様、使用後のことは考えなかった技術/原発は簡単には止まらない/「5重の防御で安全」の嘘/原発はパイプのお化け/地震は3日連続で発生していた/総括原価方式で丸儲けの電力会社/行き場のない核のゴミ/関西電力の原発も事故・トラブル頻発/事故発生でも避難させなかった関西電力/毎日5500万円の無駄遣い/洗って、湯がいて、蒸して/温暖化対策にはならない原発/もう後がないギリギリの状態から/問題は長期エネルギー計画
【特別ルポ】忘れられ、棄てられる人々
原発事故の被災者たちの今… 西谷文和(フリージャーナリスト)
店舗と自宅が緊急避難所に/逃げるか、留まるか、逡巡の結果…/あらゆるものが海から陸に打ち上げられた/サイレンの柱にしがみつき助かる/海の幸を安心して食べられるか/3つの高校が「居候」しての授業/すべてが死に恐ろしい静寂が/東電社員たちは自分たちだけで逃げた/爆発で白いものが落ちてきて「もう終わったな」と/泣いて訴える高校生たち/被災者が亡くなるのを待っているかのような東電の対応/数年後が心配な内部被曝/夏は暑く、冬は寒い仮設住宅/漁網も漁具もすべて流された漁師たち/原発事故が原因で見殺しにされた人々/補償金を支払い漁協を黙らせた/請戸の海は「消滅海区」に/福島は「棄てられていく」のか/今一度、「幸せ」について考えたい
*コラム=電力会社はなぜCMを流すのか?
第2章 21世紀は自然エネルギーの時代
デンマークのエネルギーは地産地消/日本に豊富な地熱とバイオマス/再生可能エネルギーでCO2は3分の2に減らせる/世界の流れは原発抜きエネルギー/日本でも自然エネルギーに12兆円の投資/日本の貧弱な将来の再生エネルギー計画/ボトムアップ社会、デンマーク/デンマークの財産は国民/所得の再配分が当たり前の国/デンマーク社会を支える住民自治の力/「非原発」を選択した国/個人と協同組合の力で自然エネルギーを拡大/送電と発電は当然/デンマーク最大のバイオマスプラント/ゴミが減少する仕組みの社会/自然エネルギー100%の島/国中が小さな発電所で覆われている/脱原発宣言ドイツの自然エネルギー/儲かる設備に市民がどんどん投資/使う電気より売る電気が多い家/脱自動車・自転車優先の町/日本のエネルギー自給率は4%/日本のエネルギー先進自治体/買取補償制度の導入を/自然エネルギーポテンシャルの低い都会では省エネがまず第1/自然エネルギーを無視できなくなった関西電力/休耕田にパネルを設置するよりお米を作って/自然エネルギーは低エネルギー社会/10年かけてシステムの変革を/エネルギー政策を国会論議に
あとがきにかえて